腎臓内科

腎臓の働き

人間は生きていく過程で必要な栄養分や水分を食事の形で摂取します。そして不要なものを尿や便の形で体外に排泄します。このうち尿は腎臓で作られます。血液を濾過して体内の老廃物と余分な水分を尿の形で体外に排泄します。そのときにただ捨てるのではなく、体内の環境が一定になるように腎臓で調節をしながら捨てています。

腎臓の働きが悪くなると(慢性腎臓病について)

様々な理由で腎臓の働き(腎機能)は低下します。年齢を重ねるごとに腎機能は徐々に低下しますが、通常は生涯の間、日常生活に問題のない程度には腎機能は保たれます。しかし、慢性腎炎、糖尿病、高血圧、膠原病等の疾病や、薬剤の使用など様々な理由で腎機能は通常よりも速く低下し、人間の寿命よりも腎臓の寿命が先に来てしまうことがあります。
腎臓の病気の多くは目立った症状がないまま始まります。蛋白尿が3ヶ月以上続いたり、腎臓の働きが低下(糸球体濾過率:eGFRが60ml/分を下回る)したりする状態を慢性腎臓病といいます。
やっかいなことに、慢性腎臓病の初期には症状がありません。慢性腎臓病を治療せず放置すると、徐々に腎臓の働きは低下します。そして一度失われた腎臓の働きは回復しません。気づかずに腎機能が低下し、浮腫(むくみ)、頭痛、食欲の低下などの腎機能低下に伴う症状(尿毒症)が出現する頃には末期腎不全となり、腎臓の働きを肩代わりする治療(腎代替医療)が必要となります。

慢性腎臓病の早期から治療を開始し、なるべく腎機能が悪化しないように、また悪化してしまっても腎代替医療を行い、安定した日常生活を送ることが出来るように、我々は十分な医療を提供いたします。

a. 外来診療

腎臓内科の外来診療は、水曜日を除く毎日行っています。
職場や地域の健診等で指摘された検尿異常、腎機能異常の原因を調べる検査を実施しています。受診時には検査の重複を防ぐため、出来る限り紹介状や健診結果を持参して下さい。
病診連携を重視しており、安定期の慢性腎臓病腎炎は密接な連携のもとに地域の医療機関での診療を勧めています。

b. 腎臓病教室(腎不全セミナー)

当院では腎機能低下を予防する食事療法を推進するため、1994年から腎不全セミナーを開始しています。慢性腎臓病の患者さんとその家族の皆さんへの集団指導を行っています。医師、栄養士、薬剤師、看護師などの医療チームによる患者教育、療養指導などにも積極的に取り組んでいます。
1, 4, 7, 10月の第二、第三、第四金曜日の午後に行っています。腎臓病について興味のある方はどなたでも参加可能です。上記の外来にご相談ください。また、この教室に際して自己管理の手助けとして「腎臓病ノート」を作成し患者さんに配布し、その後の治療通院の手助けに使っていただいております。

c. 入院診療

1.慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)の早期診断 —腎生検—

蛋白尿、血尿など検尿異常を認め、徐々に腎機能が低下していく疾患です。早期発見、早期治療で病気を治癒・寛解させたり、腎機能の悪化を抑えたりすることが出来ます。
慢性腎炎の正確な診断のためには、腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べてみる検査(腎生検)を必要とします。当科では検診等で発見された検尿異常に対して積極的に腎生検を実施し、治療方針の決定に役立てています。腎生検のためには通常8日間の入院が必要です。

経皮的腎生検の年次推移
年  次 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
腎生検数 24 30 20 36 34 30 24 33 34
(うち剖検2例)

得られた腎生検組織の診断結果に基づき治療を行います。食事療法、降圧療法などに加えて、ステロイドや免疫抑制薬などを用いた治療を、最新の知見に基づき積極的に行っています。

2.糖尿病

 糖尿病の患者さんのうち約30%に腎合併症(糖尿病腎症)があらわれます。また、腎代替医療を必要とする患者さんの約45%は糖尿病が原因となっていますので、定期的に腎臓の検査が必要とされています。糖尿病の専門医外来とともに、入院時には同一病棟で一貫して診療できる体制により、糖尿病腎症の早期発見、糖尿病腎症に対する蛋白制限食への移行を円滑に行えるよう食事療法の変更・治療に努めています。

3.多発性のう胞腎(染色体優性多発性のう胞腎:ADPKD)

遺伝性疾患のひとつである多発性のう胞腎は、両側の腎臓にのう胞(液体のつまった袋)が多発し、それらが経年的に増大する病気です。のう胞が増大すると腎機能が低下し、腎臓以外の臓器にも合併症(高血圧、心臓弁膜症、脳動脈瘤など)を来たします。
経過・予後には個人差はありますが、ADPKD患者さんの約半数が60歳までに末期腎不全となると言われています。根治治療がないため、降圧治療や食事管理、薬物療法などによりADPKDの進行を抑制する治療が行われます。近年パソプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)という薬が使用されるようになり、ADPKDの進行の抑制効果が期待されます。当院ではこの治療導入を3泊4日のクリニカルパスを用いて行っています。

4.膠原病

 膠原病(こうげんびょう)は、自己と他者を区別するシステム(免疫)の異常により発症します。微熱が続いたり、皮膚の発疹や関節炎が生じたりするほか、全身の臓器・血管などに炎症が起きる病気です。関節リウマチも膠原病の一種です。膠原病はしばしば腎臓が障害されます。他科との診療を綿密に行い、治療を行います。

5.進行性腎障害の進展阻止 —慢性腎臓病に対する治療—

 上記のような様々な原因により腎機能が低下してしまっている状態を「慢性腎臓病」といいます。一度悪化してしまった腎機能を正常の状態に近づけることは難しいため、「これ以上腎機能を悪化させない」ことが治療の目標となります。腎機能を評価した上で、原因となっている病気に対する適切で十分な治療を行い、さらに慢性腎臓病に対する治療(生活習慣の改善、食事療法、薬物療法)を組み合わせた治療を行います。2週間程度の入院による治療コース(腎教育入院)も準備しております。

腎教育入院の年次推移
年  次 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
人数(人) 34 19 23 18 29 34 40 46

6.円滑な腎代替療法への導入 —血液透析療法・腹膜透析療法・腎移植—

 各種治療にもかかわらず腎機能が低下し末期腎不全となった場合には、腎代替療法を行うことになります。腎代替療法には透析療法(血液透析および腹膜透析)と腎移植(献腎移植および生体腎移植)があります。透析療法への導入に際しては、個人の生活や仕事の様式を重視し、納得の行く形で血液透析・腹膜透析の透析方法を選択していただけるように心掛けています。当院では維持透析療法として血液透析、腹膜透析(2018年3月現在)の患者さんの診療を行っています。
 血液透析用バスキュラーアクセス(シャント、長期留置カテーテル)の作製はクリニカルパスを使用し、導入時の入院期間の短縮に努めています。表在静脈に乏しい場合は血管外科と連携し、できるだけ人工血管に頼らないシャント作成が行われています。また、積極的にハイパフォーマンス膜を使用して透析をしており、透析療法の重大な合併症のひとつである透析アミロイドーシスの予防、進展阻止などを目標に血液濾過透析も行っています。また、バスキュラーアクセス不良に対しては定期的シャントエコー検査で評価を行い積極的に経皮的血管拡張術(PTA)を行っています(年間30例前後)。
 腹膜透析では段階的導入法(SMAP法)によるカテーテル手術を取り入れ、極力入院期間を短く(最短5日程度)しています。導入前に時間を設けることで、患者さんの不安に対する対応や腹膜透析の練習なども十分に行うことが出来ます。腹膜透析外来は隔週月曜、毎週火・金曜日に行っています。
 移植療法については患者さんに積極的に啓蒙して推進に努めています。献腎移植を希望される方については臓器移植ネットワークへの登録をお勧めしています。実際の移植については新潟大学医歯学総合病院等を紹介して移植を行ってもらっています。

腎代替医療導入の年次推移
年  次 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
血液透析導入 12 16 8 8 7 20 35 34 33 30 33
腹膜透析導入 0 5 10 10 5 7 10 7 8 6 9
腎移植 0 0 1 0 1 0 0 1 1 0 0

7.血液浄化療法

 術後の多臓器不全例の血液浄化例も多く、腎不全患者で循環動態が不安定で通常の透析が行えないような例では、持続血液濾過透析(CHDF)を行います。

年  次 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
CHDF(例数) 19 17 23 16 22 6 11 9 13 10 4 3
腹水濃縮再静注(回数) 11 18 38 26 28 31 13 60 68 37 53 47
血漿交換(例数) 6 4 1 1 2 2 0 0 3 0 0 2
血漿・血液吸着(例数) 14 11 8 8 2 1 0 3 2 0 5 7

その他、エンドトキシン吸着療法や潰瘍性大腸炎の治療として白血球除去療法等の特殊な治療も行っています。
 特に血液浄化療法では臨床工学技師(CE)の協力・活躍がめざましく、さらに充実を目指しています。現在臨床工学技師の卵の研修を広く受け入れておりますが、血液代謝部門ばかりでなく呼吸・循環部門、人工呼吸器・輸液ポンプ等の保守点検などにも職域を広げています。

スタッフ紹介

腎臓内科

内科部長

渡邊 資夫

出身大学・卒年 1994年卒
腎臓内科

内科医長

入沢 大喜

出身大学・卒年 2019年卒

当院での研修を志す医学生・後期研修医の皆様へ

当院では上記のように系統立った腎疾患診療を行っています。また多種多様な症例を診療することが出来ます。
腎臓病の診療は高血圧・糖尿病・動脈硬化・メタボリック症候群などと強く相関し、腎診療を通して内科全般を診察することが出来るようになります。当院で腎診療を行ってみませんか?経験豊かなスタッフがあなたをお待ちしています。

研修システムの一例

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
ラウンド 腎カンファレンス ラウンド
新入院
(腎教育入院)
透析室回診
新入院
(腎生検入院)
PTA
透析室回診
新入院
(内シャント入院)
透析室回診
経皮的腎生検 腎教育入院の会食
腹膜透析外来
PTA学習会
腹膜透析外来 病棟総回診 透析カンファレンス 内シャント作製
腹膜透析カテーテル留置
内科カンファレンス

※初期研修に於いては内分泌・代謝内科と同時にローテーションします。

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